空間工房 一級建築事務所

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09.12.23 Wednesday

ある建築家の言葉(2)

■八ッ場ダムの工事が凍結されました。

 凍結したのは、前原大臣。高校の先輩です。

 といっても面識は全くなく、かなりの先輩です。

 だから後輩は掃いて捨てるほどいるはず。。

 因みに私の住んでいる地域が前原大臣の選挙区。

 先輩は知らないでしょうが、後輩はちゃんと一票入れときまし

 た。

 で、公共事業は軒並み中止。特にダム工事は全国的に見直しが

 検討されているようです。

 必要なものはやればいいし、不要なものは止めればいいと思い

 ます。

 でも、そのダムたった一つに人生を振り回された人には、どう

 言葉やお金を繕っても、空虚に聞こえると思います。

 先輩が悪いのか、前の政治家が悪いのか。それは知りません。

 でも、全ては国民自身が選んだのは紛れもない事実かもしれま

 せん。

 そんなこんなで、今回は土木を交えたお話し。

 どうぞ、おたのしみください。
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■ある建築家の言葉(2)

 前回の磯崎新氏に引き続き、今回は内藤廣氏にまつわる本を読
 んでいて思ったこと、感じたことを書いてみたい。

 何かの対談集だったと思う。

 内藤廣氏は勿論建築家であるが、最近は東京大学の土木工学の
 教授をされている。普通なら建築家であれば、建築学関係の教
 授に就任することが多い。でも内藤氏は土木。土木というスケ
 ール(規模だけでなく、かける時間・存続する時間も)の大き
 い建造物を通して、建築を見直す。又は、共に成長する。又は、
 あまりデザイン性の重視されない土木の世界にも、建築と同様
 にデザイン的アプローチを試みる。といった様々な点を考慮し
 て、敢えて土木の世界に飛び込まれたものと思っている。あく
 までも個人的な想像だが。。

 昔から建築と土木の相性は良くない。と一般的にはなっている。
 でも一般人からすれば、建築と土木に大きな違いは見られない
 かもしれない。かくいう私も、大学受験の時「建築学科」と
 「土木学科」の具体的な違いが正直分からなかったので、調べ
 た記憶がある。

 その時に記憶では「建築」は主に創った「内部」を使い、「土
 木」は主に創った「外部」を使うというもの。シンプルである。

 「建築」は、住宅に始まり美術館や超高層ビル、果ては都市計
 画まであるが、まあ確かに内部を主に使うために創られる。

 「土木」は、宅地の擁壁に始まりダムや橋梁(瀬戸大橋やレイ
 ンボーブリッジなど)、果てはどこまであるのか知らないが、
 確かに創った外部を使っている。

 では何故、建築と土木の相性が良くないのか?というのは良く
 知らないので、あまり触れないでおく。

 そんな建築と土木の違いを、内藤氏は一言で言ってのけた。
 「建築は小乗仏教であり、土木は大乗仏教である」と。小乗仏
 教は「自らを助けられないのに、他人を助けることなどできな
 い」という考え。それに対して大乗仏教は「他人を助けること
 で、自らを助ける」というもの。深い。実に深い。

 そう述べたあとで、こう加えられている。「自分の敷地だけで、
 セコセコとあーでもない、こーでもないとやっているのではな
 く、もっとマクロな視点で建築というものを語らなくてはなら
 ない。創らなくてはならない。小乗仏教から大乗仏教に転換す
 る必要があるのではないか?」と。

 読んでから随分と時間が経っているので、かなり私的解釈が含
 まれているかもしれない。だから違っていたらゴメンナサイ。
 である。

 が、概ね上記のような内容だったと思う。

 恐らく。きっと。たぶん。。

 自分の設計は、どちらなのだろう?と振り返ってみた。自らを
 も助けられずにいるのではないだろうな?と。もしそうであれ
 ば、最悪だ。

 自らの敷地の中/与えられた領域は助けられているはず。では、
 それによって他人の敷地/自らが直接的に手を加えられない領
 域を助けているだろうか?街並みに貢献出来ているだろうか?
 都市的な視点で設計できているだろうか?

 まだそこまでは残念ながら考えが及んでいないかもしれない。
 街並みに貢献するとは、法的条件や条例を守るといった低次元
 な話しではないと思う。でも高次元に、どのように展開してい
 くのか?そこに存在することで、周りにどんな好影響を与える
 ことができるのか?住宅規模で、それを実現するためには、ど
 うすれば可能か?考えることは色々ある。ありすぎる。そして、
 内藤氏の言葉は今の自分には深すぎる。

 事務所から歩いて5分程度のところに内藤氏が設計した「とら
 や一条店」が今年の夏にオープンした。オープン翌日に訪れた。
 近いから。

 内部も外部も凄く良い。京都にも調和している。スケール感も
 良い。大き過ぎず、小さ過ぎず。高さも高過ぎず、低過ぎず。
 外部に面した建具は夏と冬で入替えられている。昔ながらの京
 町屋風情も備えた、そんなカフェである。

 そこに佇んで、庭を眺めながら寛いだ時、「これが大乗仏教の
 建築だよ」と語りかけられた気がする。私は小さく肯いた気が、
 する。
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■編集後記

 最後の3行は言うまでもなく、フィクションです。

 今考えて、書いてみましたので、実際には肯いたりしてません

 から!ご心配なく。

 ただ、内藤氏の言葉が説得力を持った瞬間であったことは事実

 です。有言実行。

 私もそうありたいと思います。

コラム | by muranishi | comments(0)

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