空間工房 一級建築事務所

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09.12.21 Monday

ある建築家の言葉(1)

■本を読むのが好きです。

 別に建築の本に限らず、普通の本も多く読みます。

 好きな作家は、少し前までは浅田次郎でした。

 講演会にも行ったほど、浅田フリークだったし、出された本は

 全て買っていました。

 最近は伊坂幸太郎。奥田英朗。五十嵐貴久。雫井脩介。等など。

 いずれもエンターテイメント性の高いものとなっています。

 芥川賞派よりも直木賞派。

 文学作品よりも大衆作品。

 の傾向があると自己分析しています。

 どちらかというと、頭を休めるために読む感じになっています。

 そして、それらの合間合間に建築の本も読みます。

 今回はそんな本の話しから。

 この関連の話しは、何回かに分けてお送りするかと思います。

 それでは、その初回。どうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(1)

 職業柄、建築関係の本を読むことが多い。建築雑誌も勿論見る
 のだが、建物のプランや写真がメインの雑誌とは異なり、色々
 な建築家の考えや言葉を目にすることでも、刺激を受ける。

 そんな建築家の書いた本について、気づいたことや考えたこと
 を少し書き留めておきたいと思う。

 今回は、その一回目。磯崎新氏にまつわる本を読んでいて、思
 ったことを書いてみたい。

 本の題名は忘れた。事務所内か家の中を探せば見つかるのだろ
 うけど、題名自体はそんなに重要でもないので、このまま書き
 進める。

 設計業界では有名な話しの顛末が書かれたものだった。その事
 の発端は、磯崎氏が「住宅は建築ではない」と言い放ったこと
 に始まる。後に有名となる建築家が集まる飲み会での出来事で
 ある。勿論、磯崎氏が若い頃の発言であるが、既に大型建築を
 手掛けていたことも明記しておく。

 磯崎氏の発言の意図は、こうだ。
(私の独断解釈が含まれていることを前提にお読みいただきたい)

 建築家は住宅に手を出してはいけない。住宅まで手を出しては、
 それで飯を食っている大工さんや棟梁の仕事がなくなる。建築
 家はあくまで、公共建築など、建築の専門性が大きい分野を手
 掛けるべきだ。そうして、不特定多数の利用者に建築を通して、
 社会に自分の意思を訴えるべきだ。時に社会批判をすべきだ。
 小さな住宅で、社会を批判すべきではない。

 だから「住宅は建築ではない」

 それを聞いた、その場にいた住宅作家(主に住宅を手掛ける建
 築家)は猛烈に反論した。らしい。取っ組み合いの喧嘩になっ
 た。らしい。その場には安藤忠雄氏もいた。らしい。

 磯崎氏の言いたいこともわかる。言っている内容もわかる。誰
 だって大きな建築を手掛けたいし、社会に貢献もしたい。

 でも「住宅は建築以外のなにものでもない」と個人的には思う。

 一般の方には「建築」自体が何なの?と思われる方も居られる
 と思うので、少し私なりの解説を挟むと。

 「建築」と「建物」は概念が違う。
 英語でいうと「Architecture」と「Building」の違い。
 設計の立場から言えば「建築家=Architect」と「ビルダー=
 Builder」の違い。「建築」は芸術性や批判性を含み、「建物」
 は箱をつくるイメージ。または、建物に+αの意図・意思が加
 わったものが「建築」・・・ハッキリとした定義はない。

 誤解・批判・反論を恐れずに言うと。

 「建物」は見ていてつまらない。
 「建築」は見ていて飽きない。

 さて、話しを元に戻して。

 全ての建築の根幹にあるものは「住宅」以外にないはずである。
 人は生活を安全に営むため、原始時代から、棲みかを持ってい
 たはずである。それがコミュニティを形成し、必要に応じて大
 きな建物が創られ、街並みを形成し、都市になっていった筈で
 ある。

 そんなことは百も承知の磯崎氏が、敢えて発言したのには何か
 理由があるはずである。

 そこで、ことの真意を勝手に深読みすると、こうなる。

 住宅を設計するなら、「建築」たり得る設計をしなければ、社
 会は良くならない。住宅は恐らく、この世で最も数の多い「建
 物」なのだから、それが「建物」であってはならない。「建築」
 であってこそ、建築家が手掛ける意味が出てくる。

 「全然違うよ、きみ」「住宅は建築じゃないんだって」「大き
 な建築を設計すれば、自ずと解るよ」と言われてしまうのが、
 オチかもしれない。

 それでも「住宅は建築」たるべきだと私は思う。
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■編集後記

 日本で出版される本の数は年間何冊くらいだと思われますか?

 ネットで調べたところによりますと、年間8万件だそうです。

 最近は電子ブックなるものも携帯端末で読める時代になって

 きました。

 段々「小売り業」という文化が衰退していく危機も危ぶまれて

 います。

 大手旅行会社JTBも、ネット販売の波に押されて、全国で100店

 舗ほど閉鎖するというニュースを新聞で読みました。

 何でもPCの社会。iPhoneを持っている人に見せてもらうと

 凄いですね。その機能の多様さ。

 そのうちiPhoneに乗って移動できたり、iPhoneがお風呂に

 なったりするんじゃないか?と本気で思ってます。

コラム | by muranishi | comments(0)

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