■土地は買った。予算も組んだ。法的な制約/条件も確認した。
住みたい家のイメージもぼんやりとだが、湧いている。
構造も何にしたいか希望はある。断熱性能などの予備知識も
ある程度は蓄えられた。
・・・さぁ、いよいよ設計だが・・・
設計って、何からはじめれば良いのだろう?
やっぱりプラン?それとも外観?・・
設計事務所の設計とは、一体何から始まるのか?
その全てではありませんが、一部をご紹介いたします。
どうぞ、おたのしみください。
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■何から設計を始めるべきか?
普通に考えると、「間取り」から。というのが素直というか、一
番簡単な着手の仕方かもしれない。
そして外部のカタチを整えて、断面形状を整理して、内外装の色
配分を決めて、インテリア・・という流れになるかもしれない。
そして出来た建物は、間取り優先のステレオタイプ。。
「うーん。間取りは良いんだけど、外観がイマイチ・」
とか
「ありがちだけど、やっぱり住みやすさが一番大事だから、これ
で問題なし!」(と、割り切ってしまう。又は妥協してしまう。)
とか・・
勿論、上記の流れで素晴らしい建物もできる。
こともある。
でも、必ずしも素晴らしい建物になるかどうかは怪しい。と思う。
何も雑誌に載る住宅が最適解とは限らないし、デザイン優先で住
み難い家では本末転倒な感じになってしまうので、あまりお勧め
できない。
ま、今回はあくまで「何から設計を始めるか?」という視点なの
で、何が最適解かを探っているわけではない。そもそも最適解が
あるかどうかも怪しい世界でもあるのだけれど。。
とある有名建築家の設計の進め方を少し。。
所員を3つのグループに分け、其々のグループに「平面図」「立
面図」「断面図」を描かせる。しかもお互いは描いている図面の
内容を知らない。つまり、「平面図」グループは、他のグループ
がどんな「立面図」や「断面図」を描いているのか知らない。と
いうもの。
勿論、各グループから出来上がってきた図面には整合性などある
はずもない。
そこからの進め方は、最も優れた「平面」なり「立面」なり「断
面」をピックアップして、ブラッシュアップしていく。というも
の。
例えば「平面」が優れている場合、それを基に「立面」「断面」
が引っ張られる形で、検討が重ねられる。そして次の段階で「立
面」が「平面」よりも優れている場合、「立面」を基に「平面」
「断面」の検討が重ねられる。。という具合で、どんどん図面が
洗練されて一つの形に収斂していくという感じ。
ここで「優れた」図面を「ピックアップ」する時には、かなりの
審美眼なり洞察力・考察力が問われるので、一般的(専門家では
ない人)には真似できないし、「所員の能力が高い」という大前
提に立っているので、ますます真似できない。
まあ、上記の進め方で何を言いたいのかというと、決して一方向
からアプローチするわけではない。ということである。
冒頭で述べた進め方/始め方だと、「平面」ありきで進んでしま
うので、立面や断面といった3次元に展開された時に、どこかで
無理や無駄が生じてしまうことになる。
とある有名建築家の進め方はあくまで一つの手法であって、毎回
その手法をとっているかまでは知らない。
でも、「様々な角度から」創り上げていくというのは納得できる。
「何から設計を始めるべきか?」という問題。
私達もいつも一つの手法に則って、着手している訳ではない。
参考までに一つの手法を挙げておくと。。
これはかなり初期の頃に手掛けた事例。お施主様のご要望はただ
一つ。「このキッチンを使いたい」というもの。
「他にご要望は?」「ありません。」・・・
新築の話しである。決してキッチンのリフォームの話しではない。
そして見せられたカタログは、オレンジ色の曲線で構成された特
徴あるキッチン。
「好きなように設計して良い」と言われたも同然である。設計者
としては腕の振るいどころなのかもしれない。でも、要望が少な
すぎる場合、返って萎縮してしまうのが不思議なところである。
(あくまでも私達の場合ではあるが。。)
手掛りは「キッチン」。宝の地図を渡された心境である。
さあ、どこから手をつけようか?
(少し長くなりそうなので、続きは次回に・・)
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■編集後記
設計者は上から下から横から斜めから、いろいろと角度を変えて
一つの建物/住宅を考え倒します。
傍からみれば「どうだっていいじゃない」と思われる部分にも
こだわってしまいます。一種の職業病です。
一つの住宅の図面を描きあげるのに、2ヶ月や3ヶ月は当たり前
に掛かってしまいます。
ハウスメーカーや工務店なら2・3日で出来上がる図面がなぜ
そんなにも時間が掛かるのか?
普通の人から見れば、不思議に思われるかもしれません。
その理由には色々ありますが、「まだ見たことのない空間」を
お施主様の理解を得ながら共同作業で進めていくからなのかも
しれません。
共に考え、共に育んだ空間だからこそ、その家や空間に愛着が湧
き、長く住んでいただける確固とした礎が築かれるのだと考えて
います。
決して設計者の独りよがりな空間を創ってはいけないと思って日
夜 設計に取組んでいます。
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