空間工房 一級建築事務所

HOME > MESSAGE
09.10.28 Wednesday

快適性は何に比例するか?

■住宅に「エアコン」が当たり前になったのは、ここ2~30年

 のことでしょうか?

 私が小さい頃には、まだまだ普及率は低かったような気がします。

 今回は「快適性」について。

 やや近代文明批判?的な感じになりますが、私もドップリ浸かっ

 ております。ので、あまり強いことは言えないのですが。。

 敢えてひとこと。
______________________________

■快適性は何に比例するか?

 住宅を設計する時、その建物が存在する地域や敷地の条件をまず
 把握することに注力を注ぐ。

 日当りが良いのか。騒音レベルは高いのか。見晴らしは良いのか。
 見せるべき風景はあるのか。将来的に周辺に高い建物が建つのか。
 建てられる地域なのか。街並みは古いのか。新しいのか。隣の家
 の窓の位置は?などなど。

 上に挙げたものは、主に外的環境。周辺状況。といって良いと思
 う。野中の一軒家でもない限り、必ず周辺は、なんらかの形で影
 響を及ぼしてくる。そしてこちらの建物も相手/周辺に影響を及
 ぼす。

 こちらの南は相手にとって北であり、こちらの北は相手にとって
 の南なのである。

 そんな様々な状況・条件の下、果たして「快適性」とは何なのか。

 「自然の風が吹き込む家」と言ったところで、周辺が交通量の多
 い幹線道路なら、逆に吹き込まない方が快適なのは容易に想像で
 きる。

 だから、何が快適なのかは、その建物が位置する状況によって異
 なる。

 昔は、「夏をもってむねとすべし」と徒然草に記されていたりす
 る。これは、「日本」の夏場が如何に蒸し暑いかを記している。

 いや「京都」の夏場が如何に蒸し暑いかを記している。

 いや、もっと細かく言うと、吉田兼好は恐らく「仁和寺」辺りに
 暮らしていたのだから、京都市右京区辺りの夏場を示している。

 のかもしれない。

 確かに京都の夏は暑い。でも北海道は涼しい。

 兼好法師が北海道在住だったなら「冬をむねとすべし」と綴った
 に違いない。

 かなり話しは横道に入り込んでしまったので、もとに戻す。

 「快適性は何に比例するか?」

 外的要因によって、快適性を決定する基準要因はかなりの確率で
 変化することは、上にも述べたとおりである。

 では、内的要因を考えた時、何が見えてくるか。

 思うに。

 動線の良さ。自分の好きな/落着く色使い。設備機器(エアコン
 ・食洗機・床暖房・通信類・ウォシュレット等)の充実。プライ
 バシー(適度な人の距離)の確保とコミュニティの確保。収納量
 の充実。などなど。

 。。。設備機器の充実ってマンションや建売りのチラシで良く目
 にする謳い文句・宣伝文句じゃないか?

 それじゃあ、つまらない。と、ごく個人的に思う。

 充実してるに越したことはないのかもしれないけれど、「それだ
 け」では味気ない。

 多分、空間と空間の繋がり方や、そこに佇んだ時に感じる気配・
 肌触り・質感・視線・視覚といった「五感に訴えかけてくる」何か
 が、快適性には大きく影響してくるのだと思う。

 詩的な、そして私的な意見ではあると思うけれど、物理的・定量
 的な基準によるのではなく、感覚的な基準により快適性は変化す
 る。

 これもまた、正解や回答といったものはない。

 そこに住まう人。訪れる人。が長い間、佇んでいたいと思える空
 間。そんな空間を設計していきたい。

______________________________

■編集後記

 数十年前の住宅と比べると、恐らく今の住宅は快適だと思います。

 それは、エアコンの普及や床暖房・高気密・高断熱などハードな

 環境側面が各種メーカーの研究・努力により、技術が進歩した事

 に拠る部分も大きいかと思います。

 ただ、その反面「地球温暖化」という地球規模での問題も実は

 その快適性の裏に隠されていたりもします。

 設備に頼らない生活。それは言うほど簡単なものではありません。

 実際夏は暑く。冬は寒い。のが日本です。

 四季の移り変わりを、あまり移り変わらない室内から眺める。。

 理想ではありますが、正解かどうかは皆さんで判断いただく必要
 
 が含まれています。

 「住みやすさ」と「快適性」は必ずしも比例しないかもしれませ

 ん。

コラム | by muranishi | comments(0)

コメントをどうぞ

空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
住所:〒602-0914京都市上京区室町通り中立売下がる花立町486
TEL:075-432-3883
FAX:075-334-8051
ALL CONTENT COPYRIGHT 2012(C) KUKANKOBO YOSYAKOZO ARCHITECYS OFFICE ALL RIGHTS RESERVED