空間工房 一級建築事務所

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14.01.20 Monday

お土産物屋さん

■用事がなければ立ち入らない場所というのは沢山あると思います。
病気にならなければ病院には行きませんし、車を買う予定がなけれ
ば車のショールームに行くこともあまりありません。ある明確な目
的が生じて初めて、その場所に行くというのが一般的かと思います。
そんな話に関係あるといえばあるようなお話。どうぞおたのしみく
ださい。
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■お土産物屋さん

 得てして近場に住んでいる人は入らないものである。

 先日少し時間が出来たので、4歳になった息子と二人でブラリと
 町に出た。いつも目的地は決めずに出る。先日は雪も降ったので、
 雪景色の金閣寺でも見ようかと思いバス停へ。息子は銀閣寺へ行
 きたかったらしく、目的のバス停とは真逆を向いて歩きだす。い
 や、違う、こっちだと息子の手を引き目的のバス停へ。と、そこ
 へ丁度金閣寺行きのバスが来たのだが、あいにく私たちは道路の
 反対側にいるため、あえなく見送る羽目になった。次のバスまで
 15分。ま、特に急いでいるわけでもないが、凄く寒いので、
 15分を待つという選択肢ではなく、次来たバスに乗るという選
 択肢を選んだ。そして次に来たのは嵐山行き。雪の嵐山も良いか
 もしれないと思いつつ乗りこむ。

 昨年の台風18号で災害に見舞われてから初めての嵐山だったが、
 以前の様子と変わりない姿に少し安心。でも雪が横殴りに降って
 いるので、とりあえず緊急避難先にと選んだのは土産物屋さん。
 嵐山には何度も訪れているが、ひときわ目立つこの大きな土産物
 屋さんに入ったのは初めてである。そもそも地元なので土産物を
 買うこともなかったので今まで足を踏み入れたことがなかった。

 雪のためか、渡月橋は人がまばらなのに店内は結構な観光客で一
 杯である。土産物も多岐にわたり置かれている。勿論京都のお菓
 子メーカーやお漬物といった陳列内容だが、全体の様子は特段嵐
 山に限った土産物屋の様子ではなく、全国の観光地でよく見かけ
 る風景である。そして息子は、電車や車のおもちゃに見入ってい
 る。「嵐山と関係ないやん!」と思いつつ、息子と一緒にしばし
 見入る。

 観光地に土産物屋さんは付き物である。清水寺、金閣寺、銀閣寺、
 嵐山などなど。その参道や門前町には飲食店や土産物屋さんが軒
 を並べている。これはなにも京都に限ったことではない。その土
 地に行ったという証や思い出として自分のために買ったり、友人
 や家族のために買ったりするのだと思う。

 でも意外と地元の人は買わない。買わないどころか、土産物屋さ
 んに入らない。なぜか。それはきっと、その場所に住んでいるか
 ら。そこが日常の場所だからなのだろう。

 地元住民はめったに買わないが、お土産はその場所性や地域性と
 密接につながっている。と思う。まあ、おもちゃの電車や車は別
 として。そして、その土産物屋という店舗自体もそれぞれの場所
 性や地域性を少なからず体現している。京都であれば、必要以上
 に京都を意識させる造りだったりする。それが観光気分をより盛
 りたてたり、印象深いものにしたりするのだと思う。

 お土産という文化は、情報化社会にあって非常に原始的な存在で
 ある。余程おいしかったり有名でない限り、通販/ネットショッ
 ピングで土産物を購入することはないと思う。その場所へ行った
 からこそ購入する意味があると言える。昔、富士山に行ったとき
 「富士山の空気」なんていう土産物があった。中味は空の缶詰。
 富士山の空気が入っているであろう缶詰。いわば何の価値もない
 ものが、「他にはない場所」という貴重さを伴ってはじめて商品
 として売られるわけである。

 建築という文化も、その場所固有のものであるはずだが、おもち
 ゃの電車や車といったお土産のごとく地域性と密接に結びついて
 いないことが多い。地域性とは何なのかを含めて地域に根ざした
 建築をつくっていきたいものだな。と思った次第である。

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■編集後記

 明確な目的は「寒さ避け」だったわけで、本来の「お土産を買う」
 という用事ではなかったのですが、なにはともあれ初めて足を踏み
 入れました。ご当地ものが色々あって思いの他楽しめました。京都
 といえば、こんな風に見られているんだなという発見もありました。
 灯台元暗しです。
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京都といえば舞妓さん?
京都人でもめったに見ませんが。。

コラム | by muranishi | comments(0)

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