■先日の台風では京都にも大きな被害が出ました。被災された
方々には言葉の掛けようもございません。台風一過の朝に事
務所へ来て見ますと、築80年以上の当事務所も一部土壁が
剥がれ落ち、雨漏れがしていました。早速修繕いたします。
自然災害には気をつけたい、と前回の前振りで書いたところ
でしたが、気をつけようがないこともある。と実感した次第です。
建物の維持・管理は大切ですが、それもままならない場合が
あるのも事実です。そんなお話に少し関係のある本編です。
どうぞおたのしみください。
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■お隣さんが京都迎賓館ですねん
一週間前のふるいニュースである。京都の新聞=京都新聞の第
一面にドドーンと掲載されていたネタなので、知っている人も
多いかもしれないし、知らない人が多いかもしれない。
京都御苑の東端に梨木神社という神社がある。京都三名水の一
つで、千年以上前から沸き続けているといわれる「染井」も境
内にあり、そこそこ有名な神社である。
私は毎日自転車で事務所に通っているが、毎日この神社の前を
通り、御所を抜けて事務所に向かう。にも関わらず、全くこの
ニュースを知らなかった。
このニュースとは、梨木神社の参道にマンションが建つという
ニュースのことである。「それは、アカン」と見出しを見たと
きに思った。だって、神社の隣ではなく、「参道」ですよ?立
派な石造りの鳥居も建っていて、参道の奥の方に本殿が構えて
いるというシチュエーションですよ?それを画策した組織は、
どんだけ商魂たくましいねん。と思ったわけです。
が、よくよく読んでみると、結構考えさせられる内容。
画策者は当の神社。氏子が居ない神社のため、寄進が思うよう
に集まらず、築130年を超える本殿などの修復費用を今後捻
出していくことが出来ない。切羽詰まったため、所属する神社
本庁にも理由を伝え、マンション建設の合意を得ようとされた
らしい。しかし、京都御苑の隣ということもあり、合意を得る
にいたらなかった。そこで神社本庁を脱退し、マンション建設
計画を進める道を選んだとのこと。60年の定期借地権付とし、
その地代で安定的に神社を運営・維持していくという道である。
同じ記事にも書いてあったが、出世稲荷神社という秀吉にあや
かったとされる神社も昨年、財政難のため、建立以来400年
以上の土地を売却し、大原へ移転した。跡地にはマンションが
建っている。
いずれも維持・管理の難しさを提示している。京都の景観問題
を持ち出すまでもなく、深刻な内容である。有名な神社でさえ、
このような状況であることを考えると、あとは推して測るべし、
である。京都市の景観課も白紙撤回を求めたそうである。しか
し、建築基準法や景観条例に違反していない建物を規制/抑制
する力などあるはずがない。誰も、まさか御所の隣(というか、
現地を見れば分かるが、「御所の中」といっても過言ではない
ほどの景観である)しかも神社の参道にマンションを建てるこ
となど想定していないだろう。
前回のコラムでも書いたが、経済は景観に大きく影響を及ぼす
好例(悪例?)と言える。文化など経済の前には何の意味も成
さないのかもしれない。まあ、本気でそうとは思ってないが。
このマンションが出来れば、お隣さんが京都迎賓館になる。ブ
ッシュ大統領がヘリコプターで降り立った場所も、ほんの50
m程度の距離である。
この話を京都外の人にすると、「それは売れますね!」という
反応がある。
この話を京都の人にすると、「それは祟られますね!」という
反応がある。
そろりそろりと工事が始まろうとしている。毎朝、それを見る
のが結構ツライ。
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■編集後記
マンションは地下1階。地上3階。合計35室の分譲だそうです。
敷地は本殿の南側。2100平米程度。西隣は迎賓館。東隣は道
路を挟んで府立医大の校舎。南は松林。売れるでしょうね。きっと。
普段は当たり前のようにそこかしこにある神社やお寺の存在を見
ていましたが、実は心理的、景観的に貴重な存在なのだと思い知
らされました。今まであったものがこれからもあるという保障は
ない。厳しいですが、それが現実です。守るには努力が必要です。
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口を出す。お金を出さない。
お金を出す。口を出さない。
私は前者。後者になりたい。
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