空間工房 一級建築事務所

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13.09.05 Thursday

文化と経済

■連日の大雨が心配なこのごろです。築80年以上の事務所玄関

上の樋も、想定雨量を超えているためか、滝のように雨水が樋

から溢れています。昔はそんな雨、想定してないよね。と自分

に言い聞かせる毎日です。でも設計事務所だよね?ともう一人

の自分がツッこんだりもします。なにはともあれ自然災害には

気をつけたいと思います。そんなお話とはほぼ関係のない本編

ですが、どうぞおたのしみください。
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■文化と経済

街並みとは、その国、その地域が有している文化と経済の『限
界』を映し出す鏡である。

原始時代に高層ビルはなかった。それは、必要がなかったから
だし、そもそもそれだけの技術的文化が備わっていなかったか
らである。

古代エジプトにピラミッドが造られた。王の墓として。それは
経済的側面から見て、現代では造れないに等しいものであると
思う。クフ王型ピラミッドの建設コストを、とある建設会社が
1978年に試算している。それを現在の物価指数に換算する
と、建設コストはザッと5000億円。東京スカイツリーの建
設コストが約400億円ということを考えると、その経済力の
凄さがわかる。

翻って現代の日本の街並みを見る。国道沿いは大型店舗が軒を
連ね、看板だらけの様相を呈する。これは恐らく日本全国同じ
ような風景がひろがる。海沿いの漁村集落はどうか?山間部の
農村集落は?人口が密集する都心部は?昔ながらの風景が残る
場所もあれば、日々刻々と変貌を遂げる地域もある。

ただ、いずれもその街並みが、それを形成した人々が望む文化
の限界であり、経済の限界であるのだと言える。看板が並ぶロ
ードサイドショップが悪いわけではない。経済的に建設コスト
を安く、出来る限り目立たせたいという文化が産んだ産物と考
えられる。高層ビル群が悪いわけではない。コストが高い土地
を可能な限り有効活用するという経済思考とそれを実現し得る
だけの技術的文化の結晶と言える。

たとえば一昔前のSFなどで描かれる未来の街並みは、高層ビル
が乱立し、車が空中を走る。(もう飛んでいる時点で車と呼べ
ないが)それが文化(想像)の限界であり、経済の限界だとし
ても、最適解/最良解と呼べるとは思わない。

実は高層化とは全く違う方向に向かうことも文化である。その
文化に経済が納得すれば実現出来るのだと思う。地域住人の文
化的レベルが高いだけでは実現できず、経済が最優先されるだ
けでもだめ。あ、いいな!と思える街並みには文化も経済も高
いレベルで推移しているのかもしれない。
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■編集後記

イギリスの新聞、ザ・タイムズ紙で「世界の20の建造物」と

いうのが掲載されたそうです。インドのタージマハルやスペイ

ンのサグラダファミリアなどに混じり、日本で唯一紹介された

建造物がりますが、さてなんでしょう?正解は大阪梅田のスカ

イビル。理由は不明ですが・・・。設計者は京都駅ビルも設計

した原宏氏。1990年代のバブル終焉期に建てられました。当時

の文化と経済の限界の一端とも言えます。そんな限界の連続が

街をつくっています。
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文化の語源は文明開化の略である。
うそである。

コラム | by muranishi | comments(0)

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