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12.09.05 Wednesday

京都の別荘地を散策する

■前回のコラムが6月。アッ!というまにこの夏も過ぎ、空を見
 
 上げれば、秋の気配。

 みなさまお元気に過ごされておりましたでしょうか?私の方は

 いたって元気に過ごしておりました。ただ筆が怠けていただけ

 ですので、お許しください。

 さて、京都の別荘地と聞いてどこを思い浮かべられるでしょう?

 嵯峨野?嵐山?貴船?花背?大原?朽木?・・・。

 色々なご意見があるかとは思いますが、天下無双の大別荘地が
 
 実は岡崎地区にあります。このコラムでも何度か触れているの

 ですが、また触れてみます。

 それではどうぞおたのしみください。

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■京都の別荘地を散策する

 前にも書いたが、現在「景観」についての講座を受講している。

 基礎講座が昨年度に修了し、現在は実践講座を月一回程度の割
 合で受けている。

 これは「京都景観フォーラム」というNPO団体が主催する講
 座である。

 因みにこれとは別に、京都市景観政策課が主催となって景観エ
 リアマネージャーを育成する目的で、この秋から講座が開かれ
 る。こちらにも顔を出す予定である。

 こう書くと、なにやら景観に熱心になっているようにも見える
 かもしれないが、景観に特化して熱心になっているわけではな
 く、建築を考える上でそんな分野のことも知っておきたいと思
 ったのがキッカケである。

 そんな実践講座で先月、京都の岡崎界隈の別荘地を散策すると
 いう講義があった。講師は京都工芸繊維大学の尼崎教授。メイ
 ンは明治の元勲・山縣有朋公の別荘「無隣庵」。

 ご存知の方も多いだろうが、無隣庵は七代目小川治兵衛(屋号
 は植治)による作庭で有名である。が、実は岡崎界隈の別荘地
 は無隣庵を筆頭に、植治によるものがなんと13件も残ってい
 る。まあ、いずれも1000坪級の庭なので、圧巻である。た
 だ、一般に公開されているのはほんの僅かな場所と期間で、し
 かも抽選によるため、殆どお目に掛かることはできないのが凄
 く残念。

 でも無隣庵は一般公開されている唯一の庭なので、いつでもご
 覧いただける。隣には有名な料亭「瓢亭」もあるので、散策後
 のランチには丁度良い感じかもしれない。流石に夜だとアゴが
 外れるくらいの値段がするので、気軽には入れないが・・。あ、
 これは完全に私の主観なので、気軽に入れる方も大勢居られる
 とは思うが・・。

 横道に逸れたが、その植治が晩年に残している言葉がある。昭
 和8年の言葉なので、今から約90年ほど前に発せられた内容
 であることを念頭においてお読み頂きたい。

 「京都を昔ながらの山紫水明の都へかへさねばならぬ」(大阪
 毎日新聞)

 いまから90年前。充分に自然が残る時代だった筈である。に
 もかかわらず、昔ながらの姿に戻さないといけないと言わせし
 めるものは一体何だったのか?

 山紫水明の景観が破壊されはじめていたのだろうか。それとも
 既に破壊されていたのだろうか。たとえば昭和30年頃の京都
 の古い写真集を見る限り、ノスタルジックな風景が広がるもの
 の、決して景観が破壊されているようには感じないのは、現代
 の景観を知ってしまっているからなのか。それともいつの時代
 も景観は変わり続ける運命にあるということなのか。

 もし七代目が生き返って、今の京都の姿を見たとしたら、どう
 思うのか?

 その感想を想像するのは、案外容易だと思うのは私だけだろう
 か?

 全ての風景・景観を原点に戻すことなど不可能だし、きっと誰
 もそんなことを望んではいないと思う。そもそも「原点」をど
 の時間軸に設定するのかを議論するだけでも時間が掛かりそう
 だ。昭和8年の風景を目にしていた七代目ですら、上述のよう 
 な思いを述べるのだから、原点探しは難しい。

 では、景観を考えるとは一体何なのか。原風景を探すことでは
 なく、原風景に戻していくことでもないとするなら、何を目指
 すのか。

 今私が持っている/思っている答えを述べるとするならば、み
 んなの財産として継承していけるものを再生・保存・創出・利
 用・活用してくことなのではないか。と思う。答えは変わるか
 もしれない。いや、きっと変わるだろう。んが、今この瞬間の
 思いはこんな感じである。

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■編集後記

 そもそも岡崎てどこやねん?!とお思いの他府県の方も大勢

 おられるかと思います。

 車で京都入りされる方は、京都東インターチェンジで降りられ

 た場合、かなりの確率で通過される場所にあります。

 滅茶苦茶中途半端な情報ですが、分かりやすく言えば、京都市

 動物園や京都会館や京都市立美術館や京都国立近代美術館や

 平安神宮がある界隈を指します。その中でも別荘地自体は、南

 禅寺周辺に分布しておりまして、結構分かり難い場所にありま

 す。でも、一箇所「杏こ庵(あんこあん)」という喫茶兼食事

 処では、植治作の庭を眺めながらお茶が出来ます。その上、

 「大黒さん」や「マリアさま」などの石が置かれており、パワ

 ースポット的な恩恵も受けられたりしますので、お勧めです。

 因みにその「大黒さん」を触っておきました。良いことが起こ

 ると信じています!
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 おおぐろさんではありません。
 だいこくさんです。

コラム | by muranishi | comments(0)

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