空間工房 一級建築事務所

HOME > MESSAGE
12.04.27 Friday

サービスをデザインする

■桜が散る前に、岡崎(京都)の十石舟に乗ることが叶いました。

 十石舟の夜桜ライトアップは今年から始まったそうです。

 昼間の舟運行も最近(ここ数年前に)始まったところです。

 既にある「琵琶湖疎水」という資源に京都市(若しくは大学の
 
 先生)が眼をつけて、そこに伏見のように舟を浮かべよう!

 と思ってそれを実行したのでしょうが、これが大当たりです。

 なにせ朝の9時半にチケットを買いに行っても、当日の12時

 半まで既に完売しているのですから。

 地域資源はどこに眠っているのか分かったものではありません。

 それを発掘するのは、温泉や油田を発掘する喜びに似ているの

 かも知れません。まあ、どちらも発掘した経験はありませんが。。

 そんな地域のお話しと微妙に絡めまして、今回のコラム。

 それではどうぞおたのしみください。
_____________________________

■サービスをデザインする

 昨年9月から受講していた「京都景観エリアマネジメント講座」
 の基礎講座が先日をもって終了した。

 景観とは何か?から始まって、景観にまつまる様々な講義を受
 けてきたわけだが、一番印象に残っているのは最初の講座と最
 後の講座。いや、途中ずっと寝ていたわけでも何でもないので、
 誤解なきよう。。

 20世紀の景観は、モノ(人工物)を造ってきた。
 21世紀の景観は、人工物と社会、人工物と経済、人工物と人
 間、といった関係性を創っていく時代になる。そうである。

 ハードというよりソフト。そして最近では、モノではなくサー
 ビスや経験をデザインする「サービス工学」という学問まで出
 来てきたらしい。

 例えば飛行機。これまでは、より多くの乗客を運ぶための旅客
 機設計だとか、より早く飛ぶための流体力学だとか、「モノ」
 に力点を置いて「モノ」が造られてきた。

 でも最近では、座席を詰め込むのではなく、全席ビジネスクラ
 ス級にゆとりを持たせて、料金はエコノミークラスに毛が生え
 た程度に設定している航空会社があるという。座席にゆとりが
 できることで、隣の人との会話が生まれ、会話をしているうち
 に目的地まで到達するため、移動時間が苦にならなくなり、そ
 れが口コミで広がり、今では満席状態が続いているという。

 本当かウソかは知らないが、恐らく本当の話し。

 これはつまり、乗客同士の会話を生み出すというサービスを、
 座席数を減らしてデザインした例である。

 今ではこのようなデザインがコミュニティ分野にも広がりを見
 せている。『地域を変えるデザイン』という本も出ている。こ
 れまたなかなか興味深い本でもある。執筆者には、今やコミュ
 ニティデザインで超有名な山崎亮氏も名を連ねている。

 景観の講義を聴いていても、どうも『コミュニティ』の影響力
 というか存在力は強そうだと感じる。

 そのコミュニティのデザインの仕方自体で、いろいろなものが
 ガラっと変わるような気さえするほどである。

 最も印象的なのは「フォアキャスティングではなくバックキャ
 スティングを目指す」というコト。

 いきなり聞くと「?」で頭が一杯になる横文字だが、内容は簡
 単明瞭である。

 フォアキャスティングとは、問題が起こってから、それを解決
 するための対策を立てるという従来型。

 それとは逆に、バックキャスティングとは、将来的な目標/ビ
 ジョンを定めて、その目標を実現するために今何をしなきゃい
 けないか?を考えて、対策を立てるという、非常に主体的な動
 き。

 最も良い(と勝手に私が思っている)例が、前述の本に出てい
 る。

 とある離島の高校のお話し。

 離島にある高校なので、少子化の影響をまともに受ける。大学
 進学率も低く、卒業しても島に留まらず、島を出て行く子供た
 ち。その結果、島は高齢化が進み、人口減少が進む。

 普通であれば、子供の少ない状況が続くので、本島との合併を
 どうするか?通うための舟をどうするか?家族ごと本島へ移住
 するか?などのフォアキャスティング的思考となる。

 が、この離島は発想をバックキャスティング的思考に変えた。

 どうしたか?

 まず、島に若者が自然に集まる/留まるという目標を立てた。
 その将来像に向けて、高校を「島留学」という名のもと、進学
 校へと生まれ変わらせる努力をした。有名予備校の講師を呼ん
 だり、格安価格で空き家を下宿先に提供したり。で、実績を積
 み、大学進学率の高い進学校へとしていった。島留学した子供
 たちは島へ戻ってくる割合が増えた。若者が島を紹介すること
 で、他の若者が集まるようになった。そして最初の目標が達成
 されるようになった。

 夢物語である。が、実話である。島根県隠岐諸島島前高校のお
 話しである。

 これもまた、高校の建物を新しくして人を呼び込むという手法
 ではなく、ソフト/サービスをデザインして人を呼び込むとい
 う手法をバックキャスティング的にやってのけた好例である。

 私達は設計事務所である。なので、どちらかというとハード
 (建物)を主にデザインする立場にいるのだと思う。

 でも。と最近は思う。その建物を本当に活かすためには、ソフ
 ト/サービスのデザインも同様に大切なのでは?と。

 建物だけ設計していれば良い時代は、とっくの昔に終わってし
 まっているのかもしれない。

 景観やコミュニティに限らず、サービスをデザインする視点は、
 今後ますます重要になってくるように思うこの頃である。

_____________________________

■編集後記

 もうすぐ。といいますか、明日からゴールデンウィークの始ま

 りです。8年ほど前のゴールデンウィーク。お昼から大阪の

 吹田で打合せの予定が入っておりまして、京都を出たのが10

 時頃。いつもなら1時間もあれば到着するのですが、その日は

 GW真っ只中。辿りついたときには、太陽が傾きかけておりま

 した・・。そんな苦い経験が今、甦っております。なぜなら

 明日、朝から名古屋で打合せが控えておりますので・・。

 無事辿りつけることを今から祈っております。。

 渋滞でも絶対に時間通りに『車で』着けるサービスがあったら

 利用しようと思います。
_____________________________

 問題を解決する時代は終わった。
 問題を発掘する時代がきた。。きた?

コラム | by muranishi | comments(0)

コメントをどうぞ

空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
住所:〒602-0914京都市上京区室町通り中立売下がる花立町486
TEL:075-432-3883
FAX:075-334-8051
ALL CONTENT COPYRIGHT 2012(C) KUKANKOBO YOSYAKOZO ARCHITECYS OFFICE ALL RIGHTS RESERVED