空間工房 一級建築事務所

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10.12.20 Monday

もしドラ

■不謹慎かもしれませんが、もし「宗教」を「事業」として捉え

 るなら、これほど成功した事業は他にありません。例えば、築

 800年を数える法隆寺。普通の建物を800年維持しようと

 すれば、ほぼ不可能です。800年持つ資材を使うことから始

 まり、800年維持するための資財を確保する。少なくとも国

 宝に指定されるまでは、信奉者が主体となって維持管理を行な

 わなければ存続し得ないわけですから、それだけの信仰を集め

 る魅力がなければいけません。

 もし~ならばと想定/仮定することは、時に一つの物語を生み
 
 出すようです。

 というわけで、もし~ならば関連から少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■もしドラ

 今更であるが、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカ
 ーの『マネジメント』を読んだら 」を読んだ。

 騒がれる前から、本屋さんに行くたびに変に目に付く表紙なの
 で何なんだ?とは思っていたが、40のおっさんが手にするに
 は勇気のいる表紙だったので、手には取らなかった。

 が、ここまで「今年のヒット商品」「160万部突破」などと
 喧伝されれば、本好きの私としては、やはり読まないわけにい
 かない。半ば宣伝に踊らされた人の代表みたいになってしまっ
 たが、読んだ。

 まあ、ここで感想を述べたところで特に何の役に立つわけでも
 ないと思うので、感想は書かない。

 読んでいて最も気になった点を考えてみたい。

 それは、「その業界で最も陳腐化されたものから決別して、イ
 ノベーションを起こす」という内容である。

 この著書の中では、高校野球の最も陳腐化したものの代表とし
 て「送りバント」と「ボール球を打たす」という2点を挙げて
 いた。野球に詳しいわけではないので、それが的を射ているか
 どうかは知らないが、それを正しいと仮定する。

 それらから決別するために、打撃面ではバントをせずに真っ向
 勝負。投球面でもボール球を投げずに真っ向勝負。要は大リー
 グ的な感じで、小手先の勝負ではなく、真っ向勝負に徹するこ
 とで、野球本来の面白さを取り戻す。といった内容だった。

 半ば常識化されてきたものを疑い、本来あるべき姿若しくは、
 こうあれば世界がガラッと変わるといったものを打ち出す例を
 考えるといった感じ。

 じゃあ建築業界に於いて。または設計業界に於いて。若しくは
 住宅業界に於いて、陳腐化したものとは何か。と考えてみた。

 多分、それはnLDKという表記/空間構成だったり、LDKという
 概念だったりするのかなと思う。

 もっと言えば、部屋名というか、部屋の役割を規定してしまう
 こと。なのかなと。

 かと言って、全てを「フリースペース」と表記すればOKとい
 うものではないことは言うまでもない。

 便器が置かれた時点で、そこはトイレだし、キッチンが置かれ
 た時点で、そこはキッチンになってしまう。お風呂も然り。

 だから、どう抗っても「部屋の役割を規定しない」でいること
 は無理。と言えるかもしれない。

 でも、キッチンが置かれた時点でキッチンになった部屋は、ど
 こまでがキッチンなのか?部屋が仕切られたところまで、とす
 るならば、部屋が仕切られない場合はどうなのか?どこまでそ
 の「キッチン」の領域/力が及ぶのか。

 キッチンの大きさによって、その広さ/領域は決まるのか。は
 たまた、キッチンの使用頻度/使用時間によって決まるのか。

 昔、キッチンは土間にあった。部屋とは隔絶された、どちらか
 というと寒々しい感じの場所にあったりもした。料理をする人
 と寛ぐ人の空間は断絶されていた。

 かまどで火を熾す行為が、ガスに変化し、防火面での区分にそ
 れほど気を使わなくて良くなった時から、台所は部屋の中に入
 り込んできた。さらに主婦の声が高まり、孤立した状態だった
 台所が団欒する部屋の中心に居場所を確立しだした。

 アイランド型やオープンキッチンが主流/当たり前となる今日
 までには、長い年月がかかっている。日本の住宅の歴史からす
 れば、アイランド型などは本当に日が浅いと言える。

 なので、LDKという一まとまりの空間自体、実は日が浅い。
 と言える。

 LDKというまとまり。これ自体、ごく最近の捉え方であると
 いうことが分かる。寝食分離が叫ばれる前などは、LD=寝室
 であった。

 なので昔は「部屋名」が役割/機能を規定していなかった。今
 で言うトイレやキッチン・浴室を除いては。

 その一方で、昔は必ずあった「客間」「座敷」「応接間」とい
 った空間は、現在の多くの住宅で姿を消しつつある。

 さて、何だか話しが拡散する一方なので、そろそろまとめる。

 nLDKやLDKという概念。今では凄く一般的な概念/表記
 だが、実は歴史が浅い。定着しているようでも歴史は浅い。と
 いうことは、全く別の概念にすり替える/すり替わる可能性は
 凄く高いと思う。

 その「別の概念」は何がきっかけで変わるのかは分からない。
 しかし、キッチンが「火」の制約から解放された瞬間に、部屋
 の中に入ってきたように、何らかの要素の変化によって簡単に
 変わってしまうような気がしてならない。

 逆に言えば、「こうなればもっと良いのに」と思うような空間
 構成から逆算して、その「何らかの要素」を変化させる手立て
 を、メーカーや異業種と手を組んで開発すれば、イノベーショ
 ンを起こすことも夢ではないと思う。

 「もしドラ」を読みながら、そんなことを思った次第である。

 次は本家ドラッカーの「マネジメント」を読んでみたい。
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■編集後記

 もしドラ批評/批判は色々あるようですが、私は単純に楽しく

 読むことができました。このもしドラの印税の10%は本家の

 本関連に寄付されるそうです。これほど「本の宣伝」で成功し

 た事例も他にないかもしれません。

 来年には映画化も決定しているそうです。一番の疑問は、なぜ

 それほどまでに売れたのか?です。

 いや、楽しく読みました。が。
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 台所は大切です。
 命と直結していますので。

コラム | by muranishi | comments(0)

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