■不謹慎かもしれませんが、もし「宗教」を「事業」として捉え
るなら、これほど成功した事業は他にありません。例えば、築
800年を数える法隆寺。普通の建物を800年維持しようと
すれば、ほぼ不可能です。800年持つ資材を使うことから始
まり、800年維持するための資財を確保する。少なくとも国
宝に指定されるまでは、信奉者が主体となって維持管理を行な
わなければ存続し得ないわけですから、それだけの信仰を集め
る魅力がなければいけません。
もし~ならばと想定/仮定することは、時に一つの物語を生み
出すようです。
というわけで、もし~ならば関連から少し。
それではどうぞおたのしみください。
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■もしドラ
今更であるが、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカ
ーの『マネジメント』を読んだら 」を読んだ。
騒がれる前から、本屋さんに行くたびに変に目に付く表紙なの
で何なんだ?とは思っていたが、40のおっさんが手にするに
は勇気のいる表紙だったので、手には取らなかった。
が、ここまで「今年のヒット商品」「160万部突破」などと
喧伝されれば、本好きの私としては、やはり読まないわけにい
かない。半ば宣伝に踊らされた人の代表みたいになってしまっ
たが、読んだ。
まあ、ここで感想を述べたところで特に何の役に立つわけでも
ないと思うので、感想は書かない。
読んでいて最も気になった点を考えてみたい。
それは、「その業界で最も陳腐化されたものから決別して、イ
ノベーションを起こす」という内容である。
この著書の中では、高校野球の最も陳腐化したものの代表とし
て「送りバント」と「ボール球を打たす」という2点を挙げて
いた。野球に詳しいわけではないので、それが的を射ているか
どうかは知らないが、それを正しいと仮定する。
それらから決別するために、打撃面ではバントをせずに真っ向
勝負。投球面でもボール球を投げずに真っ向勝負。要は大リー
グ的な感じで、小手先の勝負ではなく、真っ向勝負に徹するこ
とで、野球本来の面白さを取り戻す。といった内容だった。
半ば常識化されてきたものを疑い、本来あるべき姿若しくは、
こうあれば世界がガラッと変わるといったものを打ち出す例を
考えるといった感じ。
じゃあ建築業界に於いて。または設計業界に於いて。若しくは
住宅業界に於いて、陳腐化したものとは何か。と考えてみた。
多分、それはnLDKという表記/空間構成だったり、LDKという
概念だったりするのかなと思う。
もっと言えば、部屋名というか、部屋の役割を規定してしまう
こと。なのかなと。
かと言って、全てを「フリースペース」と表記すればOKとい
うものではないことは言うまでもない。
便器が置かれた時点で、そこはトイレだし、キッチンが置かれ
た時点で、そこはキッチンになってしまう。お風呂も然り。
だから、どう抗っても「部屋の役割を規定しない」でいること
は無理。と言えるかもしれない。
でも、キッチンが置かれた時点でキッチンになった部屋は、ど
こまでがキッチンなのか?部屋が仕切られたところまで、とす
るならば、部屋が仕切られない場合はどうなのか?どこまでそ
の「キッチン」の領域/力が及ぶのか。
キッチンの大きさによって、その広さ/領域は決まるのか。は
たまた、キッチンの使用頻度/使用時間によって決まるのか。
昔、キッチンは土間にあった。部屋とは隔絶された、どちらか
というと寒々しい感じの場所にあったりもした。料理をする人
と寛ぐ人の空間は断絶されていた。
かまどで火を熾す行為が、ガスに変化し、防火面での区分にそ
れほど気を使わなくて良くなった時から、台所は部屋の中に入
り込んできた。さらに主婦の声が高まり、孤立した状態だった
台所が団欒する部屋の中心に居場所を確立しだした。
アイランド型やオープンキッチンが主流/当たり前となる今日
までには、長い年月がかかっている。日本の住宅の歴史からす
れば、アイランド型などは本当に日が浅いと言える。
なので、LDKという一まとまりの空間自体、実は日が浅い。
と言える。
LDKというまとまり。これ自体、ごく最近の捉え方であると
いうことが分かる。寝食分離が叫ばれる前などは、LD=寝室
であった。
なので昔は「部屋名」が役割/機能を規定していなかった。今
で言うトイレやキッチン・浴室を除いては。
その一方で、昔は必ずあった「客間」「座敷」「応接間」とい
った空間は、現在の多くの住宅で姿を消しつつある。
さて、何だか話しが拡散する一方なので、そろそろまとめる。
nLDKやLDKという概念。今では凄く一般的な概念/表記
だが、実は歴史が浅い。定着しているようでも歴史は浅い。と
いうことは、全く別の概念にすり替える/すり替わる可能性は
凄く高いと思う。
その「別の概念」は何がきっかけで変わるのかは分からない。
しかし、キッチンが「火」の制約から解放された瞬間に、部屋
の中に入ってきたように、何らかの要素の変化によって簡単に
変わってしまうような気がしてならない。
逆に言えば、「こうなればもっと良いのに」と思うような空間
構成から逆算して、その「何らかの要素」を変化させる手立て
を、メーカーや異業種と手を組んで開発すれば、イノベーショ
ンを起こすことも夢ではないと思う。
「もしドラ」を読みながら、そんなことを思った次第である。
次は本家ドラッカーの「マネジメント」を読んでみたい。
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■編集後記
もしドラ批評/批判は色々あるようですが、私は単純に楽しく
読むことができました。このもしドラの印税の10%は本家の
本関連に寄付されるそうです。これほど「本の宣伝」で成功し
た事例も他にないかもしれません。
来年には映画化も決定しているそうです。一番の疑問は、なぜ
それほどまでに売れたのか?です。
いや、楽しく読みました。が。
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台所は大切です。
命と直結していますので。
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