■竣工間際の現場は押しなべて、セワシナイ。漢字で書くと
「忙しない」となります。
設計者が完全に完成形の空間に身を置くことが出来るのは
その建物の寿命から言えば、ほんの一瞬です。
図面を描いている時から、完成形が目に見えていた/イメージ
出来ていたとは言え、実際に体感するのとしないとでは大違い
と言えます。
設計者なら誰しも、自分が設計した空間に身を置きたい。現物
を見たい。と思うものだと思っています。
その時一体設計者は何を感じるのか?
そんなことを少し書いてみたいと思います。
それではどうぞおたのしみください。
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■心地良さの源
一つの住宅の竣工を迎えるたびに、それぞれの住宅の心地良さ
を体感する。
それは決して広さ狭さの尺度ではなく、もっと違う何かのよう
な気がする。
勿論、新築であれば単純に新しいから、新しいもの特有の心地
良さなんじゃない?と思ったりもする。
しかし、これは古民家やマンションのリノベーションなどでも
感じるので、「新しさ」というのもどうも違うようである。
心地良さとは、主観による部分がほとんどなので、なんらかの
明確な尺度があるわけではない。
が、敢えて考えてみたい。心地良さの源について。
心地良さとは、居心地の良さでもある。
私の尺度で居心地の良さを挙げてみる。
・明るい、若しくは程よく明るい
・景色が見える・視界が開けている
・道路や周囲の建物からの視線を感じない
・一人で居ても不安にならない。何らかの形で外の気配を感じ
ることができる。
・暑さ寒さを調整・調節できる
・無垢材など肌触りのよいものに囲まれている
・過激な色が目に入らない。落着いた色合いがよい。
・静かな時が過ごせそう
他にも挙げられるかもしれないが、思いついたものから順番に
書いてみた。
見直すと、その多くは「自分」と「外部」の関係にあるような
気がする。
ただその中でも矛盾する項目はある。
視界は開けていたいけれど、周りからは見られたくない。とい
うもの。矛盾はするが、正直な気持ちである。
この居心地の良さ尺度は、人によって違う。
この尺度の違いこそが、出来あがる空間に反映されるのだろう
し、同時に凄く大切なものなんだと思う。
私の場合、内と外の関係が心地良さに大きく影響しているとい
うことである。
だから多分、知らず知らずのうちに、その尺度は設計に取り入
れてしまっているだろうし、それがために心地良く感じるのか
もしれない。
住宅を建てられる際は、貴方も自分が心地良く感じる要素を挙
げてみては?
そこに矛盾が生じるかもしれないけれども、それをそのまま設
計者にぶつけてみると、意外と目からうろこの解決策が上がっ
てくるかもしれないし、こないかもしれない。
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■編集後記
実際には家族の尺度も出てきますので、すりあわせが必要と
なってきます。そうしてできあがった家族の尺度が、空間を
決定していくのだと思います。
そこにホンの少し、設計者の尺度を織り交ぜながら。
あと10日ほどでお引渡しを迎える住宅があります。
「ホンの一瞬」を堪能したいと思います。
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■発 行:空間工房 用舎行蔵 一級建築士事務所
(くうかんこうぼう ようしゃこうぞう)
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設計の尺度がブレると空間がブレます。
明確な尺度を持つこともまた大切です。
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