空間工房 一級建築事務所

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10.02.22 Monday

ある建築家の言葉(6)

■10年前の今日、事務所登録をしました。

 本日2月22日が事務所の創設記念日です。

 特に休みは設けていませんが・・。

 そして、今日からようやく10年目を迎えることとなります。

 すごく短かった気がしています。そんなに時間が経った気が

 していません。

 子供の運動会で走る親のように、昔の感覚のままで走ると

 きっとコケル。それほどに実際は時間が経っているようです。

 建築を設計する立場から言えば、昔の感覚のままというのは

 致命傷になりかねませんので、これからも常に新しいことへ
 
 挑戦して参りたいと思います。

 と、言いつつも今回は20年ほど前の記憶の欠片から少し。

 それではどうぞおたのしみください。
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■ある建築家の言葉(6)

 前回のコラムで「デザイン」について少し触れてみた。

 書きながら、フトある建築家の言葉がよぎったので、ついでと
 言っては怒られるかもしれないが、ある建築家の言葉シリーズ
 に絡めて書いてみたいと思う。

 それは、もう20年近く前に足を運んだ講演会というか座談会
 で聞いた言葉である。

 その座談会は、竹山聖さんと若林広幸さんが対談するのを間近
 で見るというものだった。お二人共、今も京都を拠点に活躍さ
 れている建築家である。

 で、お断りしておくが、今回記述するのはこのお二人の発言で
 はなく、原広司さんの言葉。京都駅を設計した、あの人である。

 その座談会の最後に、観覧者からの質疑の時間が設けられた。
 その質疑の中に『設計をされる中で、最も心掛けているのは何
 ですか?』というものがあった。質疑者は私ではない。小心者
 なので・・。

 その質疑に対する回答が、竹山さんからあった。若林さんから
 もあったとは思うが、何分随分昔のことなので覚えていない。
 失礼な話しである・・。

 竹山さんは、大学院時代に東大の原研究室に在籍されていた。
 その折、九州で設計・監理している建築物があり、帰りの飛行
 機の中で、原さんからこう言われたそうである。

 『デザインすることを忘れてはいけない。』

 前後の繋がり/文言は忘れた。飛行機から見える風景を見てだ
 ったか、それとも全く関係なくだったかは覚えていないし、○
 ○だから、デザインすることを~だったかも覚えていない。申
 し訳ないですが・・。

 ただ、このワンフレーズだけは覚えている。竹山さん経由の原
 さんの言葉。

 当時は私もまだ、建築を学ぶ一学生/若輩者だった。デザイン
 をするなんて当たり前じゃないか。何を今さら言ってるんだ。
 ぐらいにしか捉えていなかった気がする。

 しかし建築は奥が深い。学生の課題ではなく、実務として建築
 の設計を進めていくと、法規的な面やコスト的な側面。お施主
 様のご要望から、その建物用途が有するべき機能・性能の面に
 いたるまで、ふと気を抜くと「デザイン」をする余地がなくな
 ってしまう状況に追いやられなくもない。時間の制約もあれば、
 施工性の制約なども実際には存在する。そんな中で「デザイン」
 などやっている暇はない。という感じになることも想像がつく。

 でもそれではダメなのである。原さんが放たれた言葉の真意は、
 今となっては聞くことが出来ないので、想像するしかないのだ
 が、「当たり前」と思うことを敢えて言われたこと。そして更
 には、それをご本人ではなく、竹山さんというもう一人の建築
 家が、再度言われたという事実。それほどに、「デザインをす
 る」ということが、簡単なようで難しく、重要なのだと今は解
 釈している。

 前回のコラムにも書いた通り、何も目立つことがデザインでは
 ない。と思っている。思考そのものもデザインであるとすら思
 っている。(わけ、わからないでしょう?)

 その思考が発端/発露となって、空間が形成されていく以上、
 あらゆるところに「デザイン」要素は含まれている。

 ややもすると、畳の色は緑っぽいと決め付けてしまう。漆喰の
 色は白だと決め付けてしまう。しかし、実際には黒い畳や黒漆
 喰もある。自分や世間が持つ既成概念に捉われてはいけない。
 その空間に合う色を一つ考えるにしても「デザイン」しなけれ
 ば本当に求めている/求められている空間に、出会うこと/創
 造することはできないのだと思う。

 何度も言うようだが、デザインを優先するのはナンセンスだと
 思う。しかしデザインを放棄することは、もっとナンセンスだ
 と思っている。

 が故に『デザインすることを忘れてはいけない』という言葉が、
 20年経った今でも、去来する。
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■編集後記

 10年を迎えたから、すぐに物事が激変するわけでも何でも

 ありません。それは、新年を迎えた時と同じで、昨日と何が

 変わったわけでもありません。でも、気持ちは少し引き締ま

 る気がします。

 これからも、日々を大切にしながら、一つ一つの設計を大切

 にしながら、新たな挑戦も交えつつ、前進して行きたいと思

 っています。

 祝!自分達!

コラム | by muranishi | comments(0)

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