■同じ部屋の広さでも、広く感じるときと狭く感じるときが
あります。これは、天井の高さや自然光の入り方などにも
大きく左右される「心理」が作用していると思っています。
そしてそれと同様に、若しくは同等に、他の部屋の広さと
のバランスも作用しているものと考えます。
さて、今回はそんな「バランス」の視点から少し。
それではどうぞおたのしみください。
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■バランス
何事にもバランスは大切である。
設計を進めていく時も然りである。今回は部屋の大きさとバラ
ンスについて少し、考えてみたい。
「部屋の広さは何に比例するか」というコラムでも、部屋の大
きさにについて少し書いたことがある。その時は、外部との関
連や外部環境にも影響を受けるのではないか?という思考結果
だった。
それでは、各部屋の「バランス」は如何なものか?という視点
で考えを進めてみる。
まずは、分かりやすい例で、子供室。
分かりやすいといっても、結構分かり難いのだが・・。なぜな
ら、子供室はお施主様の考え方一つで大きくも小さくもなる代
物である。
お施主様A:子供室は勉強机と寝る場所さえあれば充分。居心
地が悪ければ、リビングに自然と集まるだろうし、
4帖半もあれば良い。そもそも子供に広い部屋は
贅沢だと思う。
お施主様B:子供室と言えども、一人の個人として尊重したい。
プライバシーも重要だし、最近はTVを置くのも
当たり前。だから最低でも6~8帖は確保してや
りたいと思う。
両極端な例かもしれないが、現実にはどちらもご要望としてあ
る例である。そして、どちらが正解・不正解という問題でもな
い。それは、その家庭個々の教育方針とも重なるので、設計者
が口を出す部分ではないと思っている。
しかしながら、部屋の大小・各個人の取り分(個室の広さ)な
どは設計していくと、次第にその大きさが決まってくる。それ
は、法規的に限界があったり、敷地的に限界があったり、ご予
算的に限界があったりといった、いわばネガティブ的な根拠に
よって決まる部分も確かにある。でもそれでは面白くないと考
える。
なにが面白くないか。ご予算は別として、法的にとか敷地面積
的にとかという縛りで思考を進めるのは、あまり生産的ではな
い。だから、そうした思考過程を経て出来上がる空間は何か窮
屈さを感じてしまう。
今の事務所に移る前は、諸々の事情から3階建ての建売り住宅
を事務所として使っていた。同じ様な住宅が並ぶ、ミニ開発的
な様相を呈した一画である。1階に駐車場。その奥に個室。2
階にLDK。3階に個室が2部屋。という間取り。明らかに法
的・敷地的根拠/制約がそのまま形に現れた空間といった感じ
であった。それは、陽の入り方などおおよそ考えてない代物で
もあった。経済的に建てるというのは重要である。しかし、そ
の結果が住空間をないがしろにしていては、いささか問題があ
るように思える。あくまでも個人的な思いだが。
もう少しバランスが良くならないのか?と思うのである。上記
の間取り。恐らく1階が主寝室。2階がリビング。3階が子供
室。を想定していることと思う。敷地の大きさから、最大限大
きく取れる大きさは決まってくる。それは分かる。そしてそれ
がリビングと水廻り(浴室・洗面室)に当てられているのも百
歩譲ったとして分かることにする。が、その大きさをニ分割し
たものが、3階の各個室になっている。その点が合点いかない。
バランスが悪いのである。リビングが狭く、個室が広いという
現象。「いや、個室を広くしたいのだ」と建てた業者は言うか
もしれない。だとしたら、そうなのだろう。批判するつもりは
ない。
そういう貴方はどうするの?と聞かれれば、もう少しバランス
を考えた提案をする。少なくとも、敷地の制約通りに積み上げ
て、あとは平面的に分割して・・とはしない。
リビングが広く、個室も広い。それはある意味理想かもしれな
い。でもそれが叶わない時もある。というか、叶わない場合が
殆どだと言っても良い。そんな時、何かを犠牲にするという考
え方ではなく、リビングも個室も快適に。という考え方をした
い。物理的に無理ならば、知恵を絞りたい。ご予算にも限りが
ある。それならば、その中で最大限のパフォーマンスを発揮し
たい。それが設計者の努めだと思っている。
話しは変わるが、アンバランスというのも悪くないと思う。話
しを元に戻すようで恐縮至極だが・・。しかし、アンバランス
のバランスというか、バランスの取れたアンバランスというか、
(変な目で見ないで下さいね。何言ってるんだコイツ・・みた
いな目で。)アンバランスな中にもバランスは潜んでいること
が前提で、アンバランスも悪くないと思っている。意図された
アンバランスさ。
まあ、バランスが良いだの悪いだの、結局は主観による判断で
しょ。という声も聞こえてきそうだが、主観を超えた共通認識
もあると思う。黄金比の話しを出すまでもなく。
そんなこんなで、バランスを大切にしながら、これからも設計
に取組んでいく次第である。
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■編集後記
過去に100坪の住宅で、子供室が12帖の住宅を設計した
ことがあります。そして現在、同じく100坪の家で子供室
が4帖半の住宅が施工中です。
本文で述べた両極端な例は実際に、ここにも存在しています。
しかしどちらもバランスが悪いとは思っていません。
バランスは取って設計しているつもりです。
では何故に、同じ100坪の住宅で子供室の広さがそんなに
違うのか?
答えは明白です。お施主様のご要望に沿った結果だからです。
如何にそのご要望をバランス良く、全体の空間に散りばめて
いくか。それが設計上は重要なのだと考えています。
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